「空き家問題」って、田舎の戸建ての問題だと思っていませんか?
でも実は、これから深刻化していくのは、都市部のマンションの空き家問題だといわれているんです。
マンションって数年で朽ち果てるものでもないし、マンション自体の管理や修繕も自分でやるわけでもないし、空き家にして何がいけないの?って思っている人も多いと思います。
でもマンションならではの空き家問題を認識すれば、放置するリスクが大きいことがわかるはず。今回は、マンションが空き家になったときに所有者が取るべき行動を徹底解説します。
目次
□1、「マンションの空き家問題」の現状
(出典:総務省統計局)
上記のグラフは、全国の空き家数と空き家率の推移を表したものです。2013年の調査によると、全国の空き家数は820万戸にも及び、総戸数に対する空き家の割合を示す空き家率は13.5%。どちらも過去最高の水準となっています。
(引用:総務省統計局より作図)
続いてのグラフは全国にある約820万戸の空き家の建物別の内訳を示したもの。
「空き家といえば戸建て」のイメージが強いでしょうが、実は空き家の6割近くを占めているのがマンションなどの共同住宅なんです。
「空き家を売却するなら解体はするな」
「空き家の見回りは大事」
「空き家を古民家カフェに活用!」
などなど、空き家の管理や活用の情報ってたくさん出ているんですが、そのほとんどが戸建ての空き家に対するものなんですよね。
今回お伝えしたいのは、「マンションの空き家はどうすればいいのか」ということ。
まずは、大阪と兵庫の空き家問題の現状から見ていきましょう。
■大阪府の現状
(出典:大阪府住宅まちづくり審議会)
大阪は人が多いし、オフィスもたくさん。空き家率は低いと思っている方が多いのではないでしょうか?しかし平成25年度の空き家率は14.8%。実は全国平均を上回る水準なんです。
(出典:大阪府住宅まちづくり審議会)
大阪府の空き家問題の特徴は、空き家率が意外と高いということと、賃貸用住宅の空き家が多いこと。
空き家総数の内、6割以上が賃貸住宅となっています。賃貸用住宅の内訳は、マンションなどの共同住宅が8割強を占めています。
また賃貸以外の空き家においても、4割を超えるのが共同住宅。建て方別で見ると、マンションなどの共同住宅が空き家数に占める割合は65%を超えています。
(出典:大阪府住宅まちづくり審議会)
地域別に見てみると、府内の住宅の約35%が存在している大阪市では、府内の空き家62.5万戸の約40%、25.5万戸の空き家が存在しています。内訳は16.4万戸の賃貸用住宅が大部分を占めます。
そもそも大阪市は賃貸用住宅の供給が過多の状況なので、築年数が古い、性能が低い、家賃が高い、駅から遠いなど、条件の悪い物件が空き家となっているケースが多いです。
大阪市を除いた府内主要鉄道15駅がある中心市街地は、戸建て、マンション、アパートが混在している地域です。
その中でも3階建以上の共同住宅の空き家が最も多いという統計が出ています。また非木造の共同住宅は、築30年を超えると空き家率は急上昇します。
一方、駅からの距離別に見てみると、駅からの距離に関わらず空き家率は概ね一定。
つまりこの地域は、駅からの距離より築年数によって売りやすさや貸しやすさに差が出やすいといえます。
郊外の住宅地に多いのは、やはり戸建ての空き家です。大阪府の郊外エリアの特徴は、空き家率が低いこと。
例えば河内長野市を見てみると、市全体の空き家率は10.5%と、不全体の14.4%より大幅に低い水準です。空き家の内訳は、およそ8割が戸建て、2割弱が共同住宅となっています。
■兵庫県の現状
(出典:兵庫県地域住宅政策協議会)
兵庫県の資料を見てみると、平成20年度の空き家率は13.3%。
同年の全国平均が13.1%ですから、際立って空き家が多い県というわけではありません。
(引用:兵庫県地域住宅政策協議会より作図)
一方、建物別の内訳を見ると、共同住宅が占める割合が63%。
全国平均と比べても、マンションなどの共同住宅の空き家が多い地域だといえます。
(出典:兵庫県地域住宅政策協議会)
兵庫県の空き家問題の特徴は、地域間の格差が大きいこと。
上記のグラフを見ると、最も空き家率が低い阪神地域が11.9%、最も空き家率が高い淡路地域が22.4%と、地域によって2倍近くの開きがあります。
空き家率の推移を見ても、大きくポイントを上げてしまった地域もあれば、減少に転じている地域もあります。
神戸・阪神地域は空き家率が低いですが共同住宅の空き家が多く、その他の地域は空き家率が高く、戸建ての空き家が多いという傾向があります。
□2、マンション空き家を放置してはいけない2つの理由
マンションの空き家を放置していると、所有者にはどんなリスクがあるのでしょうか?
放置してはいけない2つの理由を見ていきましょう。
■①管理費などの維持費が高額
「ただなんとなく」
「その内売るつもり」
このような理由で空き家となったマンションをそのままにしている人も多いですが、その間もかかり続けるマンションの維持費用をしっかり認識していますか?
マンションを維持していくための費用は、
・管理費
・修繕積立金
・固定資産税
が挙げられます。
管理費と修繕積立金は、各1~2万円ほどでしょう。固定資産税は築年数や立地にもよりますが、年間10万円は払っているのではないでしょうか?となるとマンションの年間の維持費は、50万円ほどにもなるんです。
そして併せて認識しておくべきなのが、管理費や修繕積立金は今後上がる可能性があること。
例えば、
「住人が高齢化してきたからAEDをリースしよう」
「エレベーターもそろそろ変えないと」
「マンションの経年化によって建物の保険料が高くなった」
などの理由によって、マンションの維持費用は築年数とともに上がっていくのが一般的です。
特に修繕積立金は、築20年、30年にもなると分譲時の2倍以上になっているマンションもよく見られます。規模が小さいマンションほど、維持費は上がる可能性は高いです。
また目先の話として、2019年の消費税増税によって管理費や維持費が引き上げられるマンションは多くあると推測されます。
■②「限界マンション化」や「スラム化」への懸念
マンションが「スラム化」するなんて、多くの人が考えたこともないでしょう。でも実は、公共の機関がマンションのスラム化に警鐘を鳴らしているんです。
以下、東京都住宅審議会の報告書を抜粋します。
今後、高度掲載成長期以降に供給された大量のマンションストックが高経年化し、居住者の高齢化と合わせて、マンションにおける「2つの老い」が更に進んでいく。
社会全体の高齢化も一層進む見込みである。こうした傾向に伴い、マンションにおいても、空き住戸の増加や管理組合の機能低下等によって管理不全に陥り、スラム化を引き起こす可能性が指摘されている。
一たびマンションがスラム化すれば、周辺市街地や生活環境における、治安や景観、衛生面での悪化を招き、地域社会における深刻な問題への発展する恐れがある。(引用:東京都住宅審議会)
こちらは東京都の機関の報告書ではありますが、「マンションの高経年化」、「居住者の高齢化」というのは、東京だけの問題ではありませんよね。
現に「限界マンション」というのは、各地で見られ始めている現象です。
「限界マンション」とは、居住者が高齢化し、マンションの管理機能が低下しているマンションのことです。
管理がうまくいかなくなる要因は、マンションの空き家問題。マンションの空き家率が高まり居住者が少なくなれば、管理組合に人や意見が集まらず、管理や維持がないがしろになってしまいます。
いくら管理会社がいるとはいえ、マンションの維持・管理の主体となるのは住人であり管理組合なんです。
管理不全に陥り、スラム化したマンションの資産価値は落ち続け、さらに空き家が増加する、マンションを立て替えたくても予算がない…という悪循環と、住人とっての最悪の結末になることにもなりかねません。
特に団塊の世代が後期高齢者の年齢を迎える2023年頃から、マンションの空き家問題は一層加速していき、実際に「限界マンション化」、「スラム化」するマンションが多く出てくるのではないかと危惧されています。
今の時点で管理状態がいいように見えるマンションも、注意が必要です。
今はあらゆる方面でこのような警鐘が鳴らされているので、買い手側も、管理形態や修繕計画、マンションの空き家率なんかをチェックして購入する時代なんです。
これからはどの地域においてもマンションが有り余る時代になるので、人気のないマンションはすぐに空き家率が高くなってしまいます。価値があるうちに対策を考えないといけません。
□3、放置しないために!マンション空き家の3つの対策
空き家となったマンションを放置しないために考えられる対策は次の3つです。
・賃貸住宅として貸し出す
・民泊施設として貸し出す
・売却する
今支払っている維持費用だけでも捻出するため、「空き家を貸し出そう!」と考える人も多くいます。
うまくいけば維持費用以上の収益になるかもしれませんしね。しかし「収益になるかもしれない」一方で、「収益にならないかもしれない」、「逆に赤字になるかもしれない」という可能性があるのも事実。そのため貸し出すリスクは大きいといえます。
一方、売ってしまえば今後のリスクはゼロ。ただ思い入れのあるマンションですから、売るのは気が引けてしまうというお気持ちもわかります。
ここからは、3つの対策のメリットとデメリットを具体的に見ていきましょう。
■①賃貸住宅として貸し出すメリット・デメリット
まずは、賃貸住宅として貸し出すメリットを見てみましょう。
空き家となったマンションを賃貸住宅にするメリット
1、 収益になる
2、 マンションを所有し続けることができる
賃貸に出す最大のメリットは、収益になるということでしょう。毎月、家賃を回収することができれば、管理費や修繕積立金、固定資産税などの維持費に充てることができます。うまくいけば、さらなる収入も見込めます。
また賃貸住宅としてでも所有していれば、将来的にご自身やお子さんが住むことも可能です。
その一方、賃貸に出すのは、次の4つの点がデメリットとして考えられます。
空き家となったマンションを賃貸住宅にするデメリット
1、初期費用がかかる場合がある
2、一度貸し出すと、家主の都合で退去させることが難しい
3、 定期借家にすることで上記のデメリットは解消されるが、今度は借り手がつきにくく、家賃も安くなる
4、 赤字のリスク
まず賃貸住宅として貸し出すとなると、初期費用がかかる可能性があります。人様に家を貸し出すわけですから、経年劣化や損傷が著しい場合には修繕や設備の交換が必要になります。状態にもよりますが、壁紙の張替えで10万円、フローリングの張替えで50万円、畳の張替えで10万円、ハウスクリーニングも必要…と費用がかさんでいけば、初期費用に100万円以上のお金がかかることも珍しくありません。
また賃貸経営は、家主の都合で借主を退去させることが難しいというデメリットもあります。賃貸借契約って、完全に「借主優位」の契約なんです。つまり家主が不利になるということ。それが顕著に出るのが、退去をしてもらいたいときです。
基本的に借主がそこに住み続けたいという意思がある限り、家主は借主を退去させることはできません。
数ヶ月分の家賃の免除や、引越し代金の負担などの条件を出せば退去してくれるのが一般的ですが、それでも転居したくないという借主には太刀打ちすることができないんです。
「こっちが所有者なのに!」と思うでしょうが、それが日本の賃貸借契約なのです。つまり賃貸中に「売りたい」、「他の活用をしたい」と思っても、すぐに借主を退去させることはできず、長期にわたって退去してくれない可能性もあるということです。
ただそれは、借主との契約を「定期借家契約」にすることで解消できます。定期借家契約は期間を定めた契約なので、時期が来れば必ず借主に退去してもらうことができます。
しかし難点は、期間が決まっていることで借り手がつきづらいことや、家賃が安くなってしまうこと。借主にとってはデメリットでしかない定期借家契約ですから、この点は妥協するしかありません。
そしてなにより賃貸借契約でも定期借家契約でも、必ず収入が得られるわけではありません。
不動産会社に入居者募集を委託したり、管理を委託したりするのが一般的ですから、赤字になるリスクとは常に隣り合わせです。
「空き家問題の現状」でもお話した通り、都市部の空き家の多くは賃貸マンション。
立地や築年数、ニーズにあった間取りなど、条件に恵まれていないと黒字経営をするのは一筋縄ではいかないでしょう。
つまり「賃貸経営をしよう!」としているだけでは、空き家は解消されないんです。借り手がついてやっと空き家ではなくなり、そこから黒字経営するのが難しい、簡単に退去をさせられない、というリスクもあるのですから、賃貸住宅として貸し出すという判断は簡単にしてはいけないのです。
■②民泊施設にするメリット・デメリット
続いての選択肢は、「民泊経営」をするというもの。最近、「民泊」ってよく耳にしませんか?外国人観光客の増加などから、空き家を宿泊施設として貸し出す「民泊経営」が増えています。
2018年11月の共同通信のニュースによると、民泊経営する物件が全国で1万件を超えたとか。大阪市で1,000件以上の物件が民泊経営をしているようです。
大阪は特区民泊に指定されているので、申請のハードルが低く、営業日数やその他の制限が緩いので比較的始めやすい地域だといえます。特区民泊とその他の地域との一番大きな違いは、営業日数の上限。特区民泊は上限がないので365日フル稼働できますが、その他の地域は180日が上限として定められています。
そんな民泊を経営するメリットは次の3点です。
空き家となったマンションを民泊施設にするメリット
1、 収益になる
2、 マンションを所有し続けることができる
3、 賃貸住宅として貸し出すよりリスクが少ない
「貸し出す」という点では、賃貸住宅と同じです。ただ「退去してもらうのが難しい」というデメリットがない分、賃貸経営よりリスクは低いと考えられます。宿泊者が多ければ収益にもなりますし、賃貸住宅同様、マンションを所有し続けることができる点もメリットだといえるでしょう。
では民泊経営にはどんなデメリットがあるのか見ていきましょう。
空き家となったマンションを民泊施設にするデメリット
1、 初期費用がかかる
2、 管理組合の許可が得られにくい
3、大きな収益に繋がりにくい
民泊経営を始めるにあたっては、賃貸経営よりは劣化や汚れを気にする必要はないでしょう。もちろん清潔感があり、宿泊できるだけの環境であるというのは前提として必要です。
ただし賃貸経営とは違い、オーナーは最低限の家具や家電を用意しなければなりません。民泊は「宿泊施設」ですから、ベッドや机、椅子、炊飯器、調理道具などを宿泊者のために揃える必要があるんですね。また宿泊施設には消化器などの防火設備も不可欠なため、民泊経営の初期投資は100万円前後かかると思っておいた方がいいでしょう。
また経営を始めるにあたって障害になるのが、マンション側の許可が下りにくいこと。民泊経営をするということは、不特定多数の宿泊者がマンションを訪れるということですから、管理組合に「NO!」といわれてしまうケースも多いんです。
賃貸経営よりリスクが少ないのはメリットとして挙げられますが、収益性は民泊経営の方が低いでしょう。
例えば賃貸経営だったら月10万円で貸し出せば、年間にして120万円の収入になりますが、民泊の1日の宿泊料はせいぜい5,000円前後。
180日稼働したとしても90万円ほどの収入にしかなりません。
民泊特区の大阪でも、365日常に宿泊者がいる状況を作るのは難しいでしょう。時期によっては満足な収益が得られない可能性も高いです。
また収入に対する管理費の割合は20%ほどが一般的で、電気・ガス・水道代や備品代は所有者もちというケースが多いので、賃貸経営より手元に残るお金は少ないでしょう。
賃貸経営と違って管理費は宿泊費から出すのが一般的なため、赤字経営のリスクは低いですが、その分大きな収益にも繋がりにくいです。
■③売却するメリット・デメリット
空き家を貸し出せば、うまくいけば収益に繋がります。しかしうまくいかなかったときのことを考えると、売却してしまうのが一番の選択だといえるのではないでしょうか?
まずは空き家を売却するメリットから見ていきましょう。
空き家となったマンションを売却するメリット
1、 その後の管理の手間や維持費用がかからない
2、 資産価値が一番高いときに売れる
空き家となったマンションを売却するメリットは、なんといっても管理の手間や維持費用の負担から開放されることでしょう。
マンションを貸し出すことで維持費用を捻出できる可能性はありますが、できない可能性もあるとともに「更なる負担」が増すことになります。
まずは「事業」としての負担。貸し出すという行為は個人事業ですから、開業届けを出したり、毎年の確定申告をしたりするのはけっこうな手間です。
また「経営」するにあたっては、不動産会社や民泊業者との契約業務や、居住者や宿泊者とのトラブル対応、清掃や原状回復などの負担が強いられます。
「所有し続けられる」というのは貸し出すという選択のメリットではありますが、所有者への負担が増すことは避けられません。
そして売却する2つ目のメリットは、「今」が一番高く売ることができるという点です。建物は経年につれて価値を落としていくものですから、「今」が一番高いんです。
もちろん市場動向の影響も強く受けますから、そこも気にして売り出す時期を考えなければなりません。ただ、今は中古マンションの相場価格も非常に高騰している時期なんです。
上記の表は、近畿圏における中古マンションの成約平米単価の推移を表したものです。2013年頃から価格が右肩上がりなのは、一目瞭然ですよね。
2008年から2018年までの10年間で、近畿圏の中古マンション成約平米単価は1.4倍ほどになっています。
まさに市場動向を見ても「今」が売り時。資産価値を見ても「今」が売り時。このチャンスを逃さないことこそが、「今」売却する最大のメリットだといえます。
空き家となったマンションを売却するデメリット
1、「活用する」「住む」という選択ができなくなる
空き家となったマンションを売却する唯一のデメリットは、今後の活用や将来的に住むという選択ができなくなるということです。
ただ「今後貸すこともあるかもしれない!」、「将来的に住むことができない!」というのは、逆にいえば「今は必要ない」ってことですよね。
現時点で不要なマンションを売ってしまえば、「なにか事業を始めたい」、「子どもたちが住むところが必要」というときには目的にあったマンションを選ぶこともできます。
タダで所有し続けられるわけではないのですから、必要なときに、目的にあったマンションを買った方が、無駄なお金をかけずにすむのです。
それでも賃貸経営を考えてみたい…という方は、売却相場と賃料相場を比較してみるといいかもしれませんね。
まずは当サイト「イエサテ」から、不動産会社に売却査定を依頼しましょう。査定をしてくれた不動産会社に「賃貸も考えている」旨を相談すれば、2つの選択肢を徹底比較してくれるはずです。
□4、相続したマンション空き家の売却はスピード勝負
ご所有の空き家の取得経緯が「相続」の場合は、特に早めに売り切ってしまうことをおすすめします。
それは、
・相続税の納付
・相続税の取得費加算の特例
の時期が決まっているからです。
ここから詳しく解説しますね。
■相続税の納付は10ヶ月以内
相続税は、相続した全ての人が納めなければならない税金ではありません。被相続人(亡くなった人)の相続財産が、「基礎控除」を超えた分に限り課税されます。
相続税の基礎控除額
3,000万円+600万円×法定相続人の数
相続税は、相続開始を知った日(一般的には被相続人が亡くなった日)から10ヶ月以内が納付期限となっています。
売却金額を相続税に充てたい場合は、納付の日までにマンションの引渡し・残金決済を終えなければなりませんから、49日法要が終わった頃には売却に向けて動き出すのがいいでしょう。
マンションの売却には平均して4、5ヶ月かかるといわれていますが、必ずしもその期間で売れるとは限りません。
また期間を長めに取っておくことで、高額に売れるチャンスも損なわずにすみます。
■減税を狙うなら相続から3年10ヶ月以内の売却を
マンションを売却して利益が出た場合、売却益に対して住民税と所得税が課税されます。それは相続したマンションでも例外とはなりません。
でも高額な相続税を収めた上で、さらに高額な課税を強いられるのは納得いきませんよね。
そんな場合に適用になるのが、「取得加算費の特例」です。簡単にいうと、「相続税もらってるから売却益に対する課税は安くしてあげるよー」という措置を取ってくれる特例です。
「売却益」の計算は、マンションを売った金額からマンションを買った金額を引くのではなく、次の計算式によって算出します。
売却益=売却金額-(購入金額+購入時の手数料等+売却時の手数料等)
厳密にいうと「減価償却費」なども考えなければなりませんが、話を難しくしないためにここでは割愛します。
取得加算費の特例は、「購入時の手数料等=取得費」に、相続時に納税した分の一部を加算していいよ、というもの。
「購入時の手数料等」の部分が増えるとなると、導き出される「売却益」は少なくなります。「C=A-B」でBの値が増えれば、Cの値は少なくなりますからね。
売却益に住民税と所得税の各税率がかけられて納税額が決まりますから、売却益が少なくなれば納税額も減ります。つまり相続税を取得費に加算するということは、マンション売却時の減税に繋がるということです。
ただしこの特例には適用期限があり、「相続税の申告期限から3年以内」となっています。相続税の申告期限は、相続開始から10ヶ月以内でしたね。
つまり取得費加算の特例の適用は、相続開始から3年10ヶ月以内の売却に限られるということです。
・相続税が高額
・売却益が大きい
という場合は、特にこの特例を利用する価値が高いはずです。
相続税の計算のときには、葬式費用や借入金は相続資産から引くことができます。
また相続税率や配偶者控除、その他の特例など、相続のことをもっと詳しく知りたい方は、「コチラ」をご覧下さいね。
□5、「空き家予備軍」の内にマンションを売却するという選択も
近年「空き家問題」はよく聞くようになりましたが、「空き家予備軍」なる言葉を聞いたことはありますか?
意味は予想がつくと思いますが、ここからは「空き家予備軍」の内に、あるいは所有者がご健在のうちにマンションを売却することを考えてみては?という提案です。そうすることであなたが得られるメリットも併せて紹介します。
■「空き家予備軍」とは?
「空き家予備軍」の意味は、読んで字のごとく「将来的に空き家になる可能性の高い家」。厳密にいうと、「65歳以上の高齢者だけが住む戸建てやマンションの持ち家」がそう定義されています。
2018年6月の日経新聞では、「東京、大阪、名古屋の三大都市圏に空き家予備軍は合計336万戸あり、同圏内の持ち家全体の2割強に達した」と報じています。つまり10年後、20年の間にはこの内の多くが空き家になることが予想され、大都市圏においても空き家率が大幅に高まるのは避けられないとの見方が強いんです。
2023年には団塊の世代が後期高齢者を迎えるため、その頃から空き家率の高まりは顕著に表れると見られています。
■所有者が健在の内の売却は節税効果も
「空き家予備軍」を「空き家」にしないことも大切です。つまりそれは、所有者がご健在のうちに売却してしまうということ。例えばお子さんとの同居や高齢者施設への入所をきっかけに売却するというのも、選択肢の1つとして考えてみてください。
所有者がご健在の内に売却するメリットは、
・相続の心配をしなくていい
・空き家になってからは売れるかわからない⇒売れる内に売ってしまえる
という他にも、「マイホームの3,000万円控除」が使えることにあります。
マンションを売って利益が出た場合、売却益に対して住民税と所得税が課税されるというのは、「相続税の取得加算費」でも説明しましたね。
それが「マイホーム」の売却であれば、売却益から3,000万円が控除される特例があるんです。
つまり3,000万円までの売却益なら、納税額はゼロ。この特例が適用できれば、とても大きな節税となります。
ただしこの特例にも適用期限があって、期限は「所有者がマイホームに住まなくなった日から3年後の12月31日まで」となっています。また所有者が死亡した場合には、この特例は適用されなくなります。
空き家になって放置してしまったり、所有者が亡くなってしまったりすれば、もうこの特例は使えないんです。
実は戸建ての空き家であれば、2016年に新設された「相続空き家の3,000万円控除」が適用になり、相続人にも「マイホーム控除」と同じ効果が見込めます。
しかし残念ながら「相続空き家の3,000万円控除」は、マンションは該当しないんですね。
空き家問題が深刻化している今、あなたにもメリットがある「空き家にしない」という選択肢も考えてみてはいかがでしょうか?
□6、まずはマンション空き家の価値を把握するのが大切
空き家になったマンションって、「どうせそんなに高く売れないでしょ」と思っている人が多いと思うんです。でも今はマンション価格がびっくりするくらい高騰している時期。予想以上の高値で売れるとしたら、このチャンスを逃す手はないですよね。
まずは騙されたと思って、相場価格を確認してみてください。ご自身で市場動向を調べて、周辺のマンションの価格を検索して…という手順でも相場を確認することはできますが、あなたのマンションが大阪・兵庫にあればぜひ当サイト「イエサテ」の簡単相場チェックをご利用ください。
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また具体的に売却を考えている方は、不動産会社にマンションを査定してもらいましょう。
相場価格はあくまで成約事例と市場動向から考える推測値。マンションの状況を実際に見て、プロに査定してもらわなければ、本当の価値を知ることはできません。
査定のご依頼の際も、ぜひイエサテをご活用ください。イエサテから査定依頼できるのは、大阪・兵庫でマンション売却を得意としていて、なおかつ各エリアでの実績が高い不動産会社のみ。
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□まとめ
「空き家問題」って戸建てだけではないんです。むしろ大阪・兵庫に多いのはマンションの空き家。
マンションは売れるうちに売り切ってしまわなければ、スラム化や限界マンション化する恐れもあります。
なにより「今」が一番高く売れる時期。この時期を逃して、その他の活用をして、赤字にでもなってしまえば、あらゆる面で後悔してしまうはずです。
「とりあえず」放置が一番もったいないんです。空き家となったマンションをどうするのか、今一度しっかり考えてみましょう。