マンションの売却は、基本的に「早く」「高く」売ることを目的とします。しかし「住み替え」に関しては、そこに「スムーズな買い替え」を加えなければなりません。
マンションの住み替えは、マンションを売る作業と、新居を買う作業が必要になりますよね。具体的に考えらえる住み替え方法は、次の3つです。
1、「売り」を先行させる
2、「買い」を先行させる
3、「売り」「買い」を同時進行させる
三者三様のメリット・デメリットがあるので、あなたの状況や意向に向いているのはどの方法なのか、じっくり考えてみてください。また住み替えに必要な費用や税金なども徹底解説しますので、資金計画を立てる際には参考にしてみてくださいね。
住み替えをしたいんだけど、今住んでいるマンションのローンが残っているの。
自己資金もそんなにないんだけど、どうやって住み替えればいいでしょう?
その場合、今住んでいるマンションを売ってローンを完済してから、新たにローンを組んで新居を購入して住み替えをするのが基本的な考え方です。でも実は、必ずしも売るのを先行させなきゃいけないわけでもありません。
今回は、住み替えをする3つの方法を説明するとともに、住み替えにかかる費用や税金、ローンの話をしていきますね。
目次
□1、マンション住み替え方法①売り先行型
まずは、今お住まいのマンションの売却を先行させる「売り先行型」がどんなものなのか見ていきましょう。
■売り先行型の手順
売り先行型の手順は、まずお住まいのマンションを売却するのがスタートです。マンションを買主に引き渡してしまえば住むところが無くなってしまうので、賃貸住宅などの仮住まいに転居します。
そこでじっくり新居を検討し、購入。新居の引き渡し後に転居して、住み替え完了となります。
■売り先行型のメリット
・売却代金を購入資金に充てたい
・マンションのローンを完済しないと新居のローンが組めない
という人は、基本的に新居の購入を先行させることはできません。多くの方はマンションを所有しながら新居を購入することはなかなかできないので、売り先行型は住み替えの基本ケースともいえます。
売り先行型のメリットは、次の3点が挙げられます。
売り先行型のメリット
1、 売却してから購入することで、資金の問題をクリアできる
2、 新居の予算が明確になる
3、 売却と購入に時間をかけることができる
売却を先行させれば、ローンを完済できたり、売却代金を購入資金に充てられたりするので、資金の問題をクリアすることができます。また売却した後に新居を探し始めるため、新居の予算が明確化します。資金的に余裕のある方は購入を先行させることができますが、新居を探すときに売却金額がわからない状態だと、予算を確定するのが難しいものです。
「ローンが完済できたから、新居にはお金をかけられる」
「売却代金でローンが完済できなったから、自己資金から500万円出さなければならない。新居の予算を削らなきゃ」
「売却代金が3,000万円だったから、同じくらいの予算で新居を探そう」
売却を先行させることで、このように新居の予算組みがしやすくなるんですね。
また売り先行型では、売却と購入にじっくり時間がかけられることもメリットの1つです。後述で詳しく説明しますが、「買い先行型」や「売り買い同時進行型」は、「なるべく早く売らなきゃ」、「早く新居を探さなきゃ」という制限があります。マンションは早く売れるに越したことはありませんが、スピードだけ重視して希望の価格で売れなかったり、せっかくの新居を急いで探さなきゃいけなかったりするのは、できれば避けたいですよね。
売り先行型は、売るのも買うのもじっくりと時間が掛けられるので、お住まいのマンションをできるだけ好条件で売り、家族の理想通りの新居を買うことが可能です。
■売り先行型のデメリット
一方、売り先行型のデメリットは、仮住まい期間が必要なことです。先に住んでいるマンションを売ってしまうので、新居を購入するまでの住まいを確保しなければなりません。
仮住まいの期間は、新居が引き渡されるときまでです。売却できる見込みができたときから新居を探しはじめ、タイミングよく理想的な新居が見つかれば、仮住まい期間は1カ月など短期間ですみます。しかしなかなか新居が見つからなければ、その分、仮住まい期間は引き延ばされてしまいます。じっくり新居を探すことができるのは売り先行型のメリットの1つではありますが、仮住まい期間中の費用を考えるとそんなに悠長に探してはいられないんですね。
仮住まい先は賃貸住宅のケースが多いでしょうが、一定期間だけ住める賃貸物件がなかなか見つからないのもまた難点です。ウィークリーマンションやマンスリーマンションは、家賃が高額になる傾向もあります。
また新居に転居するまでの引っ越しが2回になってしまうため、引っ越しの費用と労力が余計にかかります。
売り先行型のデメリット
1、 仮住まい中の家賃がかかる
2、 引っ越し回数が2回になるため、余計な費用と労力がかかる
□2、マンションの住み替え方法②買い先行型
買い先行型は新居の購入を先行させるので、「売らなくても買える」=資金が潤沢にある方が選択するのが基本です。
ただ実はお住まいのマンションのローンが残っている人も、売却代金を充てなければ新居を購入できない人も、特別なローンを利用すれば買い先行型を選択することができるんです。
まずは買い先行型の手順から見ていきましょう。
■買い先行型の手順
買い先行型は仮住まい期間などが必要ないので、「売らなくても買える」人にとっては難しいことはありません。
新居を買って、新居に引っ越して、それからゆっくりマンションを売却すればいいだけですからね。
でも「売らなきゃ買えない」人は、「ダブルローン」の状態にするか、「つなぎ融資」を使ってでしか買い先行型を選択することはできません。
ここからはダブルローンにするケースとつなぎ融資を利用するケースに分けて、流れを説明していきます。
◆ダブルローンにするケース
今お住まいのマンションにローン残債がある状態でも、マンションを売らずに新居を購入することができます。
ただマンションが売れるまでの一定期間ではありますが、2つの住宅ローンを同時に組むことが必要です。
これを「ダブルローン」といいます。
新居を買って、新居に引っ越して、マンションを売る、という流れは変わりませんが、新居の引き渡しから、今住んでいるマンションの引き渡しまでの間、住宅ローンが重複します。
例えば今住んでいるマンションのローン残債が2,000万円で、3,000万円の新居をローンで購入するとなると、一時的に2つ合わせて5,000万円のローンを組むことになります。
3,000万円の住宅ローン審査がギリギリ通るような人は、一時的とはいえ総額5,000万円になるローンの審査が通ることはありません。
つまりダブルローンを組むのは、審査が通るだけの収入がある場合に限られるということです。ただし審査が通ったとはいえ、従来のローンの2倍ほどの支払いになるのですから、ダブルローン期間はできるだけ短くするべきです。
◆つなぎ融資を利用するケース
続いては「つなぎ融資」を利用するケースです。
つなぎ融資は、「売却代金を購入資金に充てたいけど、新居の支払いが先に来ちゃった」というときに使える融資です。
購入物件の引き渡しと売却物件の引き渡しの「ズレ」を補うためのものだと思えばわかりやすいかもしれません。
「ズレ」を補うためのものですから、売却代金を「前借り」するイメージです。ダブルローンで融資を受けるのは購入した新居の代金ですが、つなぎ融資は「前借り」ですから、融資を受けられる額はお住まいだったマンションの売却見込み額となります。
「うちのマンション〇〇万円で売れるはずなんだけど、先に新居の購入したいから〇〇万円前借りさせてねー」といった感じですね。
つなぎ融資は買い替え時に非常に便利なのですが、基本的に不動産会社の買取保証制度を利用する人しか受けられない融資です。
買取保証とは、一定期間のうちに売れなかった物件を不動産会社が直接買い取るというもの。
買い先行型の住み替えで危惧すべきなのは、今住んでいるマンションが売れないことです。売れなかったらずっとダブルローンやつなぎ融資を受け続けなきゃいけませんからね。
そのため一定期間売れなかった場合に不動産会社に買い取ってもらえるという保証があると、売主は安心して買いを先行させることができるんです。つなぎ融資は、この買取保証制度の一端として利用されるのがほとんどです。
つなぎ融資は、売れていない物件の売却見込み額を貸してくれるというものだとお話しましたよね。
売れる保証もない家の売却見込み額を貸すのって、金融機関にとっては非常に大きなリスクだといえます。でも買取保証があれば、金融機関も安心して売却見込み額を融資することができます。
そのため買取保証制度とつなぎ融資は、セットで提供されることが多いんです。
つまりつなぎ融資を利用して買い先行型で住み替えをしたい場合は、買取保証制度があり、なおかつ、つなぎ融資をしてくれる金融機関と提携している不動産会社に売却と購入を依頼しなければなりません。
■買い先行型のメリット
買い先行型のメリットは、次の2点です。
買い先行型のメリット
1、 新居をゆっくり探すことができる
2、 マンションが空き家になってから売ることができる
買い先行型のメリットは、なんといっても購入する物件をじっくり吟味できる点でしょう。売り先行型でも新居を選ぶ時間はありますが、仮住まい期間の費用を考えるとその期間はなるべくなら短くしたいですからね。
また新居に引っ越してから売却ができるので、売却はしやすいといえるでしょう。住みながら売却活動するのは、常に綺麗にしておいたり、内覧対応したりと売主はけっこうストレスを感じるものです。転居してから売ればそれは皆無。また荷物がない状態だと、家が広く見えるという利点もあります。
■買い先行型のデメリット
一方、買い先行型のデメリットは次の2つです。
買い先行型のデメリット
1、 マンションが売れるまでのローン負担が大きい
2、 新居の予算を決めにくい
住宅ローン残債があって新居もローンで購入する場合に買い先行型を選択すると、ダブルローンになることは避けられません。また売却代金を購入資金に充てないと買えない場合は、一時的につなぎ融資を受ける必要があります。
その手間とリスクがあるのが、買い先行型最大のデメリットだといえます。
ダブルローンの状態は、マンションが売れるまで続きます。言い換えれば、売れなければダブルローンは解消できないんです。売れない間は毎月の負担がかなり大きくなりますから、早く売るためには価格を安くする必要も出てくるでしょう。しかし先に購入を決めているので、想定以上の安さで売ることもできればしたくないところ。となると、「早くダブルローンを解消したい!」「でも新居を買っちゃったしこの価格以下では売りたくない!」というジレンマが生じる恐れがあるわけです。
またつなぎ融資は、不動産会社による買取保証とセットで利用するのが基本だとお話ししましたよね。「一定期間売れなった場合は買い取ってくれる」というのは一見するとメリットのように思えますが、一般的な売り方と買取とでは売却価格に大きな差があるものなんです。
不動産会社による買取は、相場価格の7割前後になるのが一般的です。例えば普通に売れれば3,000万円のところ、買取になれば2,100万円前後になってしまうということ。こんなにも差があると、売れないことはないとはいえ新居の予算を確定させるのは難しいですよね。
買い先行型は、
・ローンを利用しなくても購入を先行させることができる、またはダブルローンの状態でも苦にならない
・売却金額によって予算が変わることはない
という潤沢な資産がある人には最適な住み替え方法です。
ただそんな資金がないという人も、
「この物件いいなぁ。でも売却もまだできてないし、ローンも完済できてないし、買えないよなぁ。でもこの物件逃したくないなぁ。」
ってことがあるかもしれません。一定期間負担が大きくなることや、売れなかったときのリスクを認識してもなお「これだ!」と思う住み替え先が見つかったときには、買い先行型で住み替えることができます。逆にいえば、「これだ!」と思う物件が見つかっていない場合は、負担が大きい分、買い先行型にするメリットはあまりないといえます。
□3、マンションの住み替え方法③売り買い同時進行型
マンションの住み替え方法の3つ目は、売り買い同時進行型です。この方法は、売却代金を購入資金に充てられ、仮住まいも不要、つなぎ期間等もなしとあって、デメリットが一番少ない住み替え方法だといえます。ただタイミングが難しいというのが難点。「同時進行」とあるように、売る行為と買う行為を同時に行い、決済日を全く同日に設定しなければなりません。
では、売り買い同時進行型の流れを見ていきましょう。
■売り買い同時進行型の手順
「同時進行」といっても、売りの契約と買いの契約は別の日でも構いません。なんといっても大事なのは、決済の日を合わせることです。
決済日を合わせることで、ローンが重複することもありませんし、仮住まい期間も必要なくなるんです。
決済日を合わせるとしても、契約は売りを先行させるのがいいでしょう。それは、売却金額が確定することで買いの予算が確定できるから。そして買うより売る方が断然難しいからです。
マンションを売るのは、買い手があってこそ成立するものです。いくら相場価格で売り出したとしても、1人も買い手が現れなかったら売却はできません。
そのため売りを確定して、売りの決済日までに買いの契約と、残代金決済・引き渡しの調整をするのが賢明だといえます。
とはいえ先行する売りの契約で、決済日までの期間を一般的な1カ月ほどに設定してしまうと新居を探す時間を確保できません。
買い替え・住み替えの場合は、買主さんに事情を説明すれば多くの場合で決済までの期間を3カ月前後にしてもらえるものです。
ただ決済日が売りの契約の3カ月後だとすれば、逆算して買いの契約は売りの契約から2カ月以内にはおこないたいところ。つまり売りの契約からおよそ2カ月が、新居を探すまでのリミットとなるということです。
また売り買い同時進行型の場合、売りの契約時に「引き渡し猶予」の特約を付けるのが一般的です。売り買いの決済日が同日ということは、事前に新居に引っ越すことができません。そのため本来、残代金決済と引き渡しは同時におこなうものですが、決済から1週間~10日後を引き渡し日としてもらい、その間に引っ越しを済ませるというのが一般的です。
少しわかりにくいですよね。ここからは売り買い同時進行型の流れをよりイメージしやすくするために、シュミレーションをしてみます。
1月1日 住み替えに向けて今住んでいるマンションの売却活動開始
今住んでいるマンションのローン残債は2,000万円。不動産会社による査定額は2,500万円だったが、少し高めにして2,700万円で売り出す。成約に至るのは2,500万円と想定する。
新居の予算は3,000万円。ローンを完済しても手元に残るであろう500万円と、住宅ローン2,500万円を組んで購入する予定だ。
ここでのポイントは、この時点で新居の物色を始めること。ただし予算が3,000万円となっていますが、今住んでいるマンションが査定額通りで売れるとは限りませんし、逆にもっと高額で売れる可能性もあります。そのためここで目星を付けておくのは、2,700万円~3,300万円ほどの物件がいいでしょう。新居を購入するのは売却の契約をした後ですが、売りに出せば明日にでも売れる可能性がありますから、売却活動と新居探しは並行しておこなうべきだといえます。
3月1日 住んでいるマンションの売却契約
結果として、売り出し価格である2,700万円で契約にいたった。想定より200万円高く売れたので、新居の予算は当初の3,000万円から3,200万円にする。
残代金決済日は、買主の同意を得て3カ月後の6月1日に設定した。この日に新居の引き渡しを目指す。買主には引き渡し猶予の特約にも合意してもらい、引き渡し日は決済から8日後となった。
ここでのポイントは、先述したように契約~決済日を一般的な1カ月後ではなく、3カ月後にしている点です。それは「住み替え先を探す期間として必要だから」でしたね。
「引き渡しまでの時期を、半年や1年にすればゆっくり新居を探せるんじゃないの?」
と思われるかもしれませんが、そうしてしまうと買主に迷惑がかかります。というか「その条件じゃ買わない」という人が多いでしょう。一般的な引き渡し時期は「1カ月」、買い替えのときは「3カ月」というのは、一種の相場のようになっています。
新居をゆっくり探したいお気持ちはわかりますが、買主あっての売却です。多くを望んではいけません。
そしてこちらも先述しましたが、「引き渡し猶予」の特約を入れている点もポイントです。これで売り買いの残代金決済日が同日でも、売るマンションの引き渡しまでに引っ越せばいいことになります。
残代金決済日は6月1日です。購入する物件は、契約~残代金決済日が1ヶ月ほどになるのが一般的ですから、逆算して5月1日頃までには新居の契約をしたいところです。
4月20日 新居の契約
事前に物色していた物件を内見し、購入を決めた。金額は予算通り3,200万円。決済日は、売りと同日の6月1日。
無事、売り買いの決済日を同日にすることができました。
6月1日 売り買い決済・新居の引き渡し
予定通り売りの残代金決済、買いの残代金決済と引き渡しを終えた。引き渡し猶予の特約により、今住んでいるマンションは6月9日までに空にすればいい。それまでに引っ越しをする。
引っ越しだけではなく、ライフラインの解約や火災保険の解約も忘れないようにしましょう。
6月7日 引っ越し(6月1日~6月8日までの間ならいつでもOK)
6月9日 売却したマンションの引き渡し →売り買い同時進行型での住み替え成功
■売り買い同時進行型のメリット
売り買い同時進行型のメリットは、売り先行型と買い先行型のデメリットを解消できる点です。また両者のメリットがそのまま活きている点もあります。具体的に考えられる5つのメリットを見ていきましょう。
売り買い同時進行型のメリット
1、 仮住まい期間がいらない、引っ越しも1回
2、 ダブルローンやつなぎ融資などの負担がない
3、 新居の予算が明確になる
4、 同日決算のため資金の問題をクリアできる
5、 売却に時間をかけることができる
売り買い同時進行型は、まさに売り先行型と買い先行型の欠点をなくした、いいとこどりのような住み替え方法ともいえます。
■売り買い同時進行型のデメリット
一方、売り買い同時進行型のデメリットは次の2つです。
売り買い同時進行型のデメリット
1、 新居を探すタイムリミットがある
2、 タイミングが難しい
新居を探す時間が限られているというのは、住み替えの3つの方法の中でも売り買い同時進行型だけです。せっかくの新居をじっくり選べないのって、人によってはとても大きなデメリットだと思います。
でも引き渡し時期を調整することができれば、新居探しには約2カ月の時間を取ることができます。人によっては、「それだけあれば十分」でしょう。
売り買い同時進行型の最大のデメリットは、タイミングの難しさです。売り買いの決済日を同日にするには、売りの契約の買主、買いの契約の売主、金融機関、司法書士…など全てのスケジュールを合わせなければならないんです。
ただしその調整をするのはあなたではありません。仲介をしてくれる不動産会社です。
ということはつまり、売り買い同時進行型は特に、住み替えを成功させるのは不動産会社にかかっているといえます。スケジューリングだけでなく、資金計画の作成や買主、売主との交渉、こちらの希望する物件を素早くリストアップする能力など、全てにおいてそつなくこなせる人でないと、売り買い同時進行型の住み替えを任せることはできません。
住み替え全般にいえることですが、売り買い同時進行型で住み替えをするときには、不動産会社の選定、そして担当者の見極めはより慎重におこなうようにしましょう。
■買い替えローンとは?
売り買い同時進行型でしか選択できないローンに、「買い替えローン」というものがあります。このローンは、売却するマンションにローン残債があり、売却してもなお完済することができない場合でも住み替えを可能にするローンです。
例えばローン残債が3,000万円あるマンションが2,000万円でしか売れず、差額の1,000万円の自己資金がない場合、そのマンションを売ることはできません。
「売った後も1,000万円のローンに対する返済を続けていけば売れるんじゃないの?」
と思われる人が多いのですが、ローンが残っているマンションには「抵当権」というものが設定されている状態です。この抵当権を外すには、基本的にローンを完済するしかないんです。
抵当権とは?
抵当権とは、債権者(借入先の銀行など)が持つ権利です。債権者は無償で住宅ローンを貸し出しているわけではなく、債務者(ローンの契約者)の返済が滞った場合に、不動産を強制的に競売にかけられる権利=抵当権を持っています。抵当権がかかっているということは、簡単にいうとその不動産が借金の担保のようになっている状態ということです。
厳密にいうと、ローンを完済しなくても売却することは可能です。でも借金の担保になっていて、いつ競売にかけられるかわからない不動産を購入しようと思う人はいませんよね。
そのため不動産を売るには、基本的にローンの完済が必要となります。
ローンを完済できなければ、基本的にそのマンションは売却することができません。それは、抵当権が抹消されないからです。売却ができないのですから、住み替えなどもってのほか…ではないんですね。ローンが完済できなければ「売却」単体はできないのですが、「住み替え」だったら「買い替えローン」を利用すればできるんです。
買い替えローンの仕組みは、残っている債務を買い替え先のローンに繰り越し、まとめるといったもの。債務をまとめることで、住んでいた家の抵当権は抹消してもらえます。
例えば3,000万円のローンが残るマンションが2,000万円でしか売れず、不足分の1,000万円を自己資金から充当することができない先ほどのケースは、上記の図のように1,800万円の買い替え先を購入し、買い替えローンを利用して不足分を合わせて総額2,800万円のローンとしてまとめれば住み替えができるわけです。
買い替えローンの条件は、売却する物件と購入する物件の決済日を同日にすること。つまり、売り買い同時進行型でしか利用できないということです。
ローンをまとめる都合上、住んでいた家の抵当権抹消と、住み替え先の抵当権設定を同時におこなわなければならないためです。
ただし買い替えローンは、簡単には審査が通りません。先ほどの例でいうと、結果として1,800万円の価値しかない不動産に、2,800万円の住宅ローンが組まれているということになりますよね。
もし債務者の返済が滞ったら、競売にかけたとしても回収できる金額は2,800万円には到底届きませんから、金融機関も審査に慎重になるんです。
審査を通すためのポイントは、買い替え先を高額なものにしないことです。先ほどの例のように、最低限買い替え前よりローン総額が減るような金額のものを選ばないと、審査は通らないでしょう。そもそも普通のやり方では売れない物件を売って、買い替えまでできるのですから、あまり高望みしてはいけません。
諸費用の支払いは、現金が基本です。
住み替えは綿密な資金計画を立てるのが重要だけど、
「どれくらいで売れるかな」
「どれくらいの物件なら買えるかな」
ということばかり考えて、諸費用のことを忘れてしまうケースも多くなります。
住み替えにかかる諸費用は意外と高額だから、住み替え先の予算にも関わってくるものです。
事前に把握して、しっかり準備しておきましょうね。
□4、マンションの住み替えにかかる諸費用
マンションの住み替えは、マンションを売って、新居を買うという、2つの取引をおこなう必要があります。そのため諸費用もけっこう高額。「マンションの売却」、「中古物件の購入」、「新築物件の購入」の3つに分けて諸費用を解説します。
■マンション売却にかかる諸費用(概算)
・仲介手数料:(売却代金×3%+6万円)+税が上限
⇒契約時・決済時に半金ずつ支払うのが一般的
・印紙税:下記参照(平成32年3月31日までの売買契約は軽減税率が適用)
⇒契約時
(出典:国税庁)
・登記費用:ローンが残っている場合1~2万円
⇒決済時
・ローン完済手数料:ローンが残っている場合、1~5万円
⇒決済時
一般的にマンション売却にかかる諸費用は、売却金額の4%前後といわれています。
■中古物件購入にかかる諸費用(概算)
・仲介手数料:(購入代金×3%+6万円)+税が上限
⇒契約時・決済時に半金ずつ支払うのが一般的
・印紙税(売買契約):先ほどの表参照
⇒契約時
・印紙税(ローン契約):先ほどの表参照(ただし住宅ローンの契約書に貼る印紙は、軽減税率が適用されない)
⇒決済時
・固定資産税精算金:売主が1年分前払いしているものを、引渡し時に合わせて日割り計算して精算
⇒決済時
・管理費・修繕積立金精算金:マンションの場合、売主が1ヶ月分前払いしているものを、引渡し日に合わせて日割り計算して精算
・登記費用:所有権移転登記30万円ほど
ローンを組む場合、抵当権設定費用2~3万円
⇒決済時
・ローン手数料:ローンを組む場合30万円ほど(金利に上乗せすることで、決済時は少額に抑えることもできる)
⇒決済時
・火災保険料:加入年数や平米数によるが30万円前後
⇒引渡し後
・不動産取得税:固定資産税評価額×4%(軽減税率の取り扱いは自治体によって異なるので、大阪府・兵庫県のHPをご覧下さい)
一般的に中古物件購入にかかる諸費用は、購入金額の6~10%といわれています。ローンを組むか組まないか、ローン手数料を金利に上乗せするかしないかで費用は大きく変わってきます。
■新築物件購入にかかる諸費用(概算)
新築物件を購入するときは、分譲会社や不動産会社が売主となっている場合は仲介手数料の支払いはありません。固定資産税精算金や管理費等精算金の支払いもありませんが、マンションなら修繕積立基金(30万円前後)が、戸建ての場合は水道負担金等がかかります。また物件によっては、購入申し込み時に頭金とは別に「申込金」が数万円程度かかる場合があります。その他かかる諸費用は、中古物件と同じと思っていいでしょう。
一般的に新築物件購入にかかる諸費用は、購入金額の7%~10%といわれています。仲介手数料があるなしや住宅ローンの利用等で、諸費用には大きな差があります。
□5、 住み替え後の確定申告
マイホームを売却して売却益が出た場合、3,000万円が控除される特例があります。一方、新築でも中古でも新居を購入した場合は、住宅ローン控除が適用になります。ただし3,000万円の特別控除と住宅ローン控除は併用できないので、住み替え時にはどちらの控除を利用するのが自身にとって有益かをよく考え、確定申告する必要があります。確定申告は、売却、購入をした翌年の3月15日までです。
■住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除とは、10年以上の借入期間の住宅ローンによって住宅を購入した場合、10年間に渡って毎年の年末残高の1%が控除される制度です。控除額の上限は、毎年40万円(長期優良住宅の場合は50万円)、10年で400万円(長期優良住宅の場合は500万円)なので、とても大きな減税になります。
適用要件等の詳細は、国税庁HPをご参照ください。
■「譲渡所得」によって住宅ローン控除が損になる場合も
不動産を売ったときの利益を「譲渡所得」といいます。譲渡所得に対して住民税と所得税が課税され、売却した翌年の確定申告で納税する必要があります。「利益」といっても、3,000万円で買ったマンションが4,000万円で売れたときの差額1,000万円が、そのまま譲渡所得となるわけではありません。
譲渡所得は、以下の計算式で算出します。
譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)
税金ってどうしてこうも難しい言葉を使うのでしょう…それぞれの言葉の意味は次の通りです。
収入金額:不動産の売却金額
取得費:その不動産を買ったときの金額に、買ったときにかかった手数料等を加えたもの。建物の場合は、そこから減価償却費を引く必要があります。
譲渡費用:不動産を売ったときにかかった手数料等
減価償却費を引くってどういうこと?
「減価償却費を引く」というのは、家の経年による価値の低下をここで考慮するということです。例えば3,000万円で買った家が10年後に2,000万円で売れたとき、「1,000万円損失した!」となったら少しおかしいですよね。この10年の間に家の価値は確実に下がっているので、実質1,000万円も損失していないはずだからです。
年数に応じた価値の低下分=自宅マンション(鉄筋コンクリート造)の減価償却費の計算式は、次の通りです。
減価償却費(定額法)=購入代金×0.9×償却率0.015×経過年数
今の例を当てはめてみると、減価償却費はこうなります。
3,000万円×0.9×0.015×10=405万円
つまり10年前に3,000万円で買ったマンションの今の価値は、減価償却費を引いて次のようにわけです。
3,000万円-405万円=2,595万円
「3,000万円で買ったマンションが、4,000万円で売れた」という先ほどの例が、新築で購入してから10年後だとすれば、次の計算式になります。3,000万円で買ったマンションの10年後の減価償却費は、上記で「405万円」と分かりましたね。ここでは売買にかかった手数料は、仲介手数料3%のみとして計算します。(3,000万円の3%=90万円、4,000万円の3%=120万円)
4,000万円-{(3,000万円+90万円-405万円)+120万円=1,195万円
このケースの譲渡所得は、1,195万円となります。
この譲渡所得に対して所得税と住民税がかかりますが、税率は所有期間によって異なります。所有期間によって異なる税率は以下の通りです。
(出典:国税庁)
今想定しているケースの所有期間は10年ですから、所得税と住民税で20.315%が課税されます。このケースで収めるべき税金は次の通りです。
1,195万円×20.315%≒243万円
ただしマイホームの売却には、3,000万円が控除される特例があるとお話しましたよね。3,000万円は譲渡所得から引くことができるので、この場合、譲渡所得はゼロとすることができ、課税もされなくなります。
しかし住宅ローン控除と3,000万円の特別控除は併用ができないので、ここで住宅ローン控除と比較する必要があります。
住宅ローン控除で上限の400万円が控除されるとなれば、住宅ローン控除を利用する方が得です。3,000万円控除を使って納税しなくてすむのは、この場合243万円ですからね。一方、買い替え先が2,000万円の物件で、10年に渡って控除される額が200万円に満たないような場合は、3,000万円控除を利用する方が得です。
このように実際にきちんと計算してみないと、どちらが得かはわかりません。確定申告の前には必ず計算し、わからない場合は不動産会社や税理士に相談するようにしてください。
□6.マンションの住み替えは「いくらで売れるか」の把握が大事
3つの住み替え方法を説明してきましたが、基本的にはどんな人でもまずは「売り買い同時進行型」を目指すべきだと思います。やはり「売り先行型」で必要になる仮住まい期間、「買い先行型」で必要になるダブルローンやつなぎ融資は、住み替えをする人にとって大きな負担になるからです。
売り買い同時進行を目指したけど、
「決済日を合わせられなかった」
「どうしても先に買いたい物件が見つかって購入したけど、売却がなかなか決まらない」
「売却した後、なかなかいい物件が見つからなかった」
ということもあるでしょう。「売り先行型」と「買い先行型」は、そういったときの「結果論」という位置づけにするべきです。
売り買い同時進行型は、売却活動と物件探しを並行しておこなうものです。「いくらで売れるか」がわからないうちに新居を探さなければならないので、相場の確認や不動産会社による査定は、住み替え時は特に重要になってきます。
■イエサテの簡単相場チェック
「相場の確認」といっても、素人の売主が相場なんて知るよしもありませんよね。ただ、今はインターネットで物件検索や成約情報などが簡単に検索できるので、やってできないものではありません。しかしその作業、正直言って面倒なんですよね。でもご安心あれ。
当サイト、イエサテは、大阪・兵庫エリア限定ではありますが、全てのマンションの相場価格を利用者様に代わって事前に調べております。レインズの成約事例をもとに相場価格を算出しているため、情報も信頼できますし、なんといってもイエサテの相場チェックは匿名+無料。さらにワンクリックですぐに相場価格が表示されるシステムを構築しています。
ただし「相場価格」は、マンションの中を実際に見ておこなう「査定」ではないので、売却できる「目安」に留まります。住み替えをより具体的に考えている方は、必ず不動産会社に査定依頼をして、「いくらで売れるか」を把握するようにしてください。
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あなたのマンションが大阪・兵庫エリアなら、査定依頼もぜひイエサテにお任せください。イエサテに参画しているのは、マンション売却を得意としており、このエリアの各地域で実績がある不動産会社のみです。
住み替えは、今住んでいるマンションの売却を成功させるかどうかが鍵を握っているといっても過言ではありません。売却のスピード次第ではいい物件を逃してしまいますし、価格次第では希望の物件を買うことができませんからね。マンションをより早く、高く売ることができる不動産会社を見つけることができれば、必ずあなたの住み替えは成功します。ぜひイエサテから査定依頼し、より良い住み替えに向けた第一歩を切ってください。
□まとめ
マンションの3つの住み替え方法とともに、住み替え時に選択する可能性があるローン、住み替えにかかる費用や税金についてお話してきました。
マンションの売却だけでも苦労する中、新居の購入までする住み替えは、ご家族にとっての一大事だと思います。
でもここまでご覧頂いたあなたは、もう怖いものなし。資金計画、相場確認を済ませたら、あとは売却・購入を開始するだけです。